メーカー技術者のブログ

技術者転職、めっき技術について

「品質と人」 言葉から表れるモノづくり

お疲れさまです。

 

今回は「品質と人」がテーマです。

人の言動から見えてくるモノづくりの考え方や組織の雰囲気について、私の経験から感じたことを交えながらお伝えします。

内容は割と思いつき感もあって、まとまりに欠けるかもしれませんが、何となく雰囲気だけでも読み取ってもらえればと思います。

 

 

目次

 

 

(1)品質トラブル時の言動

 品質不良でバタバタしだすと、よく耳にするのが「製造における技術不足が原因」「ノウハウが継承がされていない」です。

 めっき製造現場や薬品開発では、社内または顧客の現場でめっき不良は多く存在し、担当者が頭を抱える様子を幾度と見てきました。めっき薬品開発においても、ユーザーへの説明や解明・対策に苦労します(私も経験した)。現職の無電解めっき工程でも不良が落ち着かず、数ヶ月にわたってモノが流せていません。客先に対策を提案しては細部を突っ込まれ、そのツッコミの対策をしては更なる細部を突っ込まれ…、その繰り返しで業務負担は増え、本質的な解決が見えず迷宮入り状態です。

 「技術不足」「若手への技術継承」。確かに要因としては考えやすいですし、あり得る話でしょう。しかし、理由としては的確でしょうか?

 

(2)製造側の問題なのか

 上記の発言に見える本質は、あくまで製造現場における技術やノウハウを対象にしています。言い換えると、開発設計や量産化検討段階には着目していないのです。しかし、現職での品質問題でも、ヒアリングしていくと、開発段階において、

・ひたすら生産速度(析出速度)を重視し、その他の要素でミスマッチがあった(浴負荷、めっき以外の析出、推奨範囲外での使用など)

・スケールアップ時のテストラン未実施(薬品メーカーの取説通りの使用で何とかなるという想定)

 

これらの不備があったのは事実だそうです。社内の量産化へ向けた取り組み(めっき液選定、テストラン)の問題、あるいは薬品メーカーの技術力不足やミスマッチな提案があったかなど、原因は不明です。しかし、いずれにしても、このまま量産移管されては、現場側はどうしようもありません。製造段階の問題ではなく、それ以前の段階が準備不足だったのではないでしょうか。

品質の良し悪しの8割は設計段階までで決まる、製造段階はせいぜい2割とよく言います。めっきの世界でも、まさしくその通りで、量産化までに抽出できなかった課題のしわ寄せは間違いなく製造側に行くのです。

「技術不足」「技術継承」というのはごもっともなように聞こえるのですが、不足していたのは“技術”や“継承”よりも、“準備”または“検証”ではないでしょうか。

 

(3)担当者の苦労

 めっき工程を含む製造業でも、めっき薬品メーカーでも、社内または顧客での品質トラブルに対し、顧客に説明したり現場で検証業務に当たる当事者がいます。率直に言うとハズレくじ、面倒という印象を持たれがちなのがこのポジションです。

まず、前述したように量産化以前の問題が原因だと後戻りしづらく、工程変更となるとさらに高いハードルが待ち受けることになります。つまり、技術的な解決策があったとしても、それを実現するには膨大なエネルギー(仕事量、精神面)が必要となります。

また、製造業に限らず、仕事における周りからの印象や評価というのは減点法(いかに失敗やマイナスを作らないか)または加点法(新たな成果や価値創造)によるものが多いでしょう。研究開発のようなゼロからプラスを生み出すような仕事とは異なり、品質トラブル対応というのは不良(マイナス要素)を解決(ゼロに戻す)することが役割です。つまり、印象としてはマイナススタートから携わり、原状回復してもプラスにはなりません。このような印象のある仕事に対して非協力的な人も少なくなく、責任感のない上司や職場だと1人で抱え込むハメになり、精神的に辛くなるケースもあります。こういう時は1人に任せるのではなく、管理職含めて関係者達が当事者意識を持ち、一丸となって取り組みたいものです。。。

 

(4)製造現場での人間模様、そして起こること

 品質は量産化検討までが勝負ではありますが、品質問題発生時にも何とかモノは流したいですし、やはり製造側も対応に追われます。

製造現場では不良発生時にどうなるでしょうか。これも管理職やリーダー次第では最悪な環境になります。

私が以前所属しためっき製造現場がその典型例です。

とあるめっきラインにおいて品質不良が多発していたため、ハルセル試験による状態確認や原因特定、液管理方法見直し、管理ミス防止のための帳票改定等の対応をしました。なんとか品質改善までやり遂げたのですが、状況について随時報告する度に上司から返ってきた言葉が「そんなの当たり前だ!」「不良が出る状態にした時点でお前はダメなんだ!」とまさかの罵倒でした。これはこの件に限らず、当時の環境では誰しもが経験したことのようです。そうなると、スタッフの中では「一生懸命取り組んでも報われない」「今後同じことが起きても、もうやりたくない」という感情が芽生えてしまいます。そして、そんな職場で起こる現象が責任転嫁です。不良発生時にスタッフ間で「この不良はスタッフAが当番(交代勤務)の時に発生したものだからAが悪い」「その前に液更新をBがしていれば不良は起きなかったはず」「その当番前から少し調子が落ちてたみたいだからCが悪い」。。。こんなやりとりが常態化していました。こうやって“誰が悪い”に集中してしまい、どう問題を解決するかを誰も考えなくなってしまいます。そんな現場でいいモノづくりができるはずもなく、当時は歩留まりも利益も右肩下がりでした(人の定着は元々悪い)。

このように、上司や職場の雰囲気によって、人の品質に対する取り組みや姿勢は大きく変わってしまいます。

「モノづくりは人づくりから」とはこういうことなのかなと私は考えています。

 

(5)まとめ

・品質はやはり開発〜量産化検討段階が重要。量産化してからではどうしようもないことがほとんど。

・品質不良が発生すると多方面から人が関わってきますが、そんな異常時ほど人の本性や考えが見えてきます。開発にしろ製造現場にしろ、各個人のそういった考えが集まって職場の雰囲気はつくられますし、モノがつくられるわけです。人もモノも意識しながら、技術者として精進したいものです。 

・毎日、品質に向き合っている方、本当にお疲れさまです。また、不良対応や品質に携わっている方に対しては、否定したり貶したりするのではなく、せめて労いの気持ちくらいは持ってください。

 

 

おわり

【初心者向け】めっき参考書3選

 

お疲れさまです。

 

今回は初心者向けのめっき関連の参考書について紹介します。

めっき関連の仕事に就くことになった方で、全く初めてで勉強しなくてはと考えてはいるものの、何から手をつければいいかわからない方もいるかと思います。

下記に紹介する本については、自身がめっき技術に携わる初期に読んだ本となり、大変役立ちました。

新人の方や、これからめっき関連の営業をされる方など、めっきの基本について勉強したい方はぜひ参考にしてみてください。

 

目次

 

 

①トコトンやさしいめっきの本(日刊工業新聞社

 これは初心者が最初に読むべき本の1つです。めっきとはなんぞやというところから、めっきの用途や種類、代表的なめっき浴種など広く記載されています。技術的なことは簡潔に書かれており、「めっき」という言葉を初めて聞く方にとっつきやすい内容となっています。これ1冊でめっきの超基本を習得できること間違いなしです。新人技術者はもちろん、営業など文系出身の方におすすめです。

 

②よくわかる最新めっきの基本と仕組み(秀和システム

 こちらも①と同じくおすすめの本です。表やイラストなどを用いたビジュアル的な解説が充実しており、めっき用途や原理をわかりやすく説明しています。また、めっきのトラブルについても記載がされており、これから技術者として関わる方にとって役立つ内容になっています。①よりこちらの方がページ数も多く、少し充実しているかと思います。

 

③二級技能士コースめっき科(職業訓練教材研究会)

 これは新人〜若手の現場技術者向けの参考書となります。初めに化学・電気化学・電気の基礎について触れられており、簡単な高校化学・物理の知識があれば理解できる内容となっています。

また、めっき装置と付帯設備、めっき種、めっき浴の代表的な組成も示されております。その他、液分析や皮膜測定評価、そして廃液などの工場公害防止に関する内容も含まれており、現場技術者や管理者が必要な基礎知識を勉強する上で重宝するものになっています。

私もめっきに携わるようになって7年経ちますが、今でも必要に応じて読み返すことがあります。何かの時に手元にあると便利な本です。

 

2級 めっき科 選択・電気めっき作業法

2級 めっき科 選択・電気めっき作業法

  • 発売日: 1997/03/25
  • メディア: 単行本
 

 

〈番外編〉理系大学受験 化学の新研究

 これは化学からしばらくブランクがあり知識や感覚を取り戻したい方にはおすすめです。

私が1回目の転職でめっき液開発に職種が変わった時に、抜けていた化学の知識を思い出すのに便利でした。転職してから「酸解離?キレート?共通イオン効果?」みたいな状態だったので、適宜この本を使って勉強しました。めっき技術で必要な液分析(pH計、滴定、呈色反応)の知識も参考になりました。 

対象は高校化学ですが、豆知識やコラムの記載もあり、高校以上に濃い内容になっています。感覚的には高校と大学の間くらいのレベルですかね。

化学知識の復習にご利用ください。

理系大学受験 化学の新研究 改訂版

理系大学受験 化学の新研究 改訂版

  • 作者:卜部 吉庸
  • 発売日: 2018/12/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

以上、参考になれば幸いです。

所感

 

本日もお疲れさまです。

私は転職2回を経験しためっき・表面処理技術者です。一貫してめっき関連の仕事をしております。

 

最終章です。

1社目で経験から感じたことをまとめました。

参考になれば幸いです。

 

目次

1章    1社目での暗黒時代:前編

1社目での暗黒時代:前編 - メーカー技術者のブログ

2章    1社目での暗黒時代:後編

1社目での暗黒時代:後編 - メーカー技術者のブログ

3章 所感

 

 

主人公は誰なのか

 現在、就活生の方で、大手企業への憧れ、会社の安定性、ブランド力etc…それらを重視し、あるいは魅力を感じる人も多いでしょう。つい “会社” に目が行きがちです。しかし、主人公はあくまで “自分” だということを忘れてはなりません。仕事で自分が何をし、その先に自分はどうありたいか。そして、それを実現するためにどの会社に入るかという視点です。私の場合、就活当時は明確なありたい姿というのはなく、1社目での休職〜転職活動期間になって考えるようになりました。幸いにも“めっき”という未だ謎の多い技術を続け、やり切ったと思えるまで究めたいという意向ができました。まだ働いたことのない(バイトは除く)就活生にとって、そのイメージを掴むのは難しいかもしれません。身内や大学のOB・OGなどを参考にし、イメージ程度でいいと思いますのでありたい姿について考えてみてください。就活時にそのイメージがなかった若手社会人の方も、実際に働いてみてどういうキャリアを実現したいかを徐々に定めてはいかがでしょう。日頃の忙しさでいっぱいになりがちですが、ふと立ち止まって考え、歩みたいキャリアについて整理してみましょう。私もまだまだ深掘りして考えていく立場ですので、皆さんいっしょに頑張りましょう!

 

“安定な会社”に『安定』はなかった

 私は世界シェアトップの製品を有し、世間的にも名の知れた会社に入ることができました。しかし、そこで目にしたのは毎日辛い顔をして出社をする人や人間性を疑う言動や行動、うつ病で会社に来れなくなる人、、、個人が潰されていく様子でした。そんなことがあろうが会社は潰れません、安定です。でも、そんな環境に自分の安定などは存在しません。結局のところ、自分で手に入れるしかないのです。それは、業界や社会に通用するスキルや専門性(=技術的資産)であったり、人望・人脈(=人的資産)などでしょう(これについては著書「転職の思考法」に記された内容ですので、ぜひご一読ください)。

 

 


昨今の終身雇用崩壊や大企業の黒字リストラなどに代表されるように、自分ではコントロールできない事態が起こりうるのです。そうなった場合でも上記資産を活かして新たな道、キャリアへ進むことができるわけです。私はまだまだ未熟者ですが、世間で通用する資産をしっかり増やしていきたいと思います。

 

今いる環境が全てではない

 1社目時代には事あるごとに上司や周りから厳しいことを言われ、ひどく落ち込み、自分に対し悲観的になりました。しかし、転職して思うのは、それら周りの反応は、必ずしもビジネスマンとしての世間からの評価とは一致しないということです。それらはあくまで会社や組織のものさしにすぎず、社会におけるあなたの価値を否定されたわけではないのです。新卒入社では特に、今いる環境に染まった状態に陥りやすく、その環境下での評価や価値観が全てなのだと錯覚してしまいます。しかし、使い物にならないと評されていた人が環境を変えた途端、メキメキと成長し評価されることはよくある話です。自身も2社目では上司や同僚と良好な関係を築き、お客さんから感謝されることもあったりとやりがいを感じていました。今、仕事で辛い思いをしていたり、周りに認められず悲観的になっている若手新卒社員の方はぜひ諦めないでください。視野を広げ、社外の知り合いや書籍などに情報アンテナを貼ってみてください。転職相談でもいいでしょう。そこに新たな道や希望が見出せるかもしれません。

 

一歩踏み出せば大したことなかった

 当時、悩みながらも行動に移せない時期がありましたが、勇気を出して転職を決意し行動すれば意外と何とかなるものです。失敗するかもしれない、今より環境が悪くなるかもしれない、辞めたら残される同僚に迷惑かける、、、私も当時は不安な気持ちになりました。しかし、残り続けた場合、何を得られるのか、納得して働けるのか、そもそも幸せでいられるのか、、、行動するリスクと天秤に掛けた結果、何もしないリスクの方が大きいと判断しました。少なくとも直近で状況が好転する可能性は考えにくく、自分で変えるしかないと考えたのです。実際、転職にはリスクがないわけではありませんが、自分の将来を変えるためなので不安は消滅していました。そうなれば行動できるものです。もちろん残念な選考結果になることもあるのですが、1社目で大した実績も実務経験もなかった自分でも転職先が決まり、新たな道に進むことができたのです。今振り返ると、求人票を眺めたり職務経歴の棚卸をしたことは楽しかったです。行動して本当に良かったです。

 

 3章にわたってお伝えしましたが、本ブログが職場やキャリアに悩み・苦しみを抱えながらも一歩踏み出せずにいる方を後押しするものになれば幸いです。

 

 

おわり

1社目での暗黒時代:後編

 

本日もお疲れさまです。

私は転職2回を経験した社会人8年目のめっき・表面処理技術者です。一貫してめっき関連の仕事をしております。

 

自身の1社目時代の後編です。

 

今回は配属後の話となります。

めっき製造現場のリアルついても描いていますので、これからめっきに携わる方などの参考になるかもしれません。

 

目次

1章    1社目での暗黒時代:前編

1社目での暗黒時代:前編 - メーカー技術者のブログ

2章    1社目での暗黒時代:後編

3章 所感

 

 

(4)配属してから

 さて本配属先はめっき工程。私のめっき技術者としてのスタートです。社内で3交替勤務を強いられる数少ない工程であり、最も過酷な工程と言われていました。上司からは「1年程度、研修として現場経験を積んでから実務的な仕事に取り組んでもらう」とのことでした。2週間経過し交替勤務が開始。ここから本格的な作業教育の始まりです。自動化が進んでいるとはいえ、複数ある数千L級のラインを動かさなければなりません。薬品補充は1袋20kgの毒劇物を何回も持ち上げての作業。溶解極板なんかでも計500kg分をホイストで運搬しながら補充作業。しかもラインの中に入っての作業で、“暑い”、“臭い”、“危険”。初めて夜勤を終え帰宅後は家の座椅子に座ってから3時間も身動きが取れませんでした。気力がない…現実の厳しさを感じなからも「あくまで研修。メインオペレーターのアシストをしながら学べることは習得したい。1年間耐えれば次のステップがある」。そう前向きに考えていました。

 

(5)苦悩

 ある日、上司から呼び出され、「来週から××ラインを1人で担当してもらう」と伝えられました。メインオペレーターが大人の事情で異動となったためです。「院卒総合職なのに研修でメインオペレーターとして経験させられるのか…」。1年間とはいえライン工として扱われる現実に衝撃を受けました。それから1週間で、装置起動、溶解極板補充、薬品補充、前処理液更新、製品運搬etc.、これらを徹底的に叩き込まれました。

しかし現実は想像を絶する厳しさでした。1週間だけで独り立ちなんてできるわけがなく、段取りが悪い、品質の判断ができない、機械トラブルなんて意味不明…。聞いても、「そんなこともできねえのか!」「ここは学校じゃない。教えてもらおうという時点でお前はクソ!」。昔ながらの現場のキレキャラといった感じで、パワハラモラハラなんて何が悪いといった様子。10秒に1回のチョコ停があっても保全責任者は「オレが壊したわけじゃないのに何で修理せなあかんのや!」と無責任に放置。ただでさえハードなのに故障多発で気力も体力も疲弊。本来、品質トラブル時は頭も使って対応したいところですが、作業に追われるだけで思考停止状態。こんな状態で一体何が得られるんだろう、、、そう思うようになりました。

 

(6)いよいよKO

 1年が経過しました。この間、あちこちラインをたらい回しにされながらの生産業務。状況は変わっていませんでした。1年前の上司の話とは異なる…このあたりから自分の置かれてる状況がおかしいと感じるようになりました。別の部署(工程)の製造配属になった同期も最初は現場研修ですが、それを終えて実務的な仕事を始めていました。「え!まだ現場でやってるの!?」「メインオペレーターをやってるの!?こっちはたまに製造スタッフの補助をしたくらいだったけど」などと言われます。大学時代の友人と集まって話をした時も、製造配属は皆無、ましてやライン工なんていません。みんな愚痴をこぼしながらも、なんだか充実して見えました。この時期から“転職”の2文字が頭をよぎるようになりました。

 2年が経過。相変わらずラインで生産です。3年目にもなれば、さすがに状況は変わるばす、そんな淡い期待で何とかやってました。

この頃から課長が絡んできて仕事を振ってくるようになりました。ただでさえ生産でいっぱい、残業も一切認められない中で二足のわらじを履けるわけがありません。そしてこの課長はいわゆるサイコパス。進捗確認をされては机を叩くなり人前で大声で激しく叱責。人格否定も当たり前。

人事にも置かれてる状況や当初の希望とは乖離があることを相談しましたが、「育成、研修方針については各職場に任せてるから」「上司の方針に従わないのは会社命令違反」「会社あってこそのあなた。最近の若い奴らはすぐに希望云々を口にする」とばっさり。真摯に向き合ってもらえませんでした。

 製造をしなくてはならないプレッシャーと置かれてる状況への不信感、加えて課長からのパワハラモラハラ

この頃から心療内科にも相談していましたが、とうとう会社に行くことができなくなりました。

 

(7)考えが変わるきっかけとなった休暇

 1ヶ月ほど休暇しました。最初は外に出ることすらできず布団の中で泣いていました。しかし2週間くらいすると少しずつ気持ちが落ち着き、外に出られるようになりました。なんとなく本屋に行ってみると、いろんな小説や著名人の価値観、人生に関する内容を記した書籍を目にしました。それらに目を通すと自分がいかに狭い世界で生きていたかに気付きました。それまでは目の前のことで必死で自分の人生や仕事について考える余裕なんてありませんでした。しかし、この期間で自分のキャリアについて冷静に見つめ直すことができたと思います。そういった意味でこの期間は貴重な体験となりました。

 そして復帰。この時すでに転職を決心していました。①やりたい仕事②勤務地③人間関係、この3つ全てが最悪だった(②については①が叶うならばということで目をつぶったが)時点で、もうこの会社に我慢して残る理由はありません。会社は安定しており、辞めるのはもったいないと周りから思われるかもしれません。でも、人生1度きり。将来、後悔しないようにせめて若いうちはやりたいことを追い求めよう、そう考えるようになりました。自分の考えが変わった時でした。

 

(8)転職

 転職活動ではめっき関連の仕事を探していました。これだけ辛い思いをしましたが、不思議にもめっき技術そのものは嫌いではなかったのです。添加剤や成分濃度を調整しながら品質を回復できた時は達成感がありました。条件を振ってめっき外観が変わる様子も勉強になりました。困りごとの解決や品質安定のために必要なツール・理屈をしっかり習得できる環境で働きたいと考えていました。そうすることでめっきの面白みを感じることができ、専門性の高い技術者になれる、そう考えました。そして転職活動の結果、めっき薬品メーカーより内定をいただいたのでした。

 最終出社日。お世話になった現場スタッフから一言。

「お前、目が輝いとるな!」

 

 

最終章へつづく

https://one2204.hatenablog.com/entry/2020/10/11/181100

1社目での暗黒時代:前編

 

本日もお疲れさまです。

私は社会人8年目のめっき・表面処理技術者で、転職2回を経験し、現在3社目です。一貫してめっき関連の仕事をしておりますが、製造現場と開発を両方経験しております。

 

今回は自身の1社目時代を振り返りたいと思います。

 

以下の3部構成にて随時投稿します。

 

目次

1章    1社目での暗黒時代:前編

2章    1社目での暗黒時代:後編

3章 所感

 

 

  まえがき

 新卒社員として社会人生活をスタートされた方は厳しい就職活動を乗り越え、大きな期待を胸に入社されたことでしょう。しかし、配属先が希望とは異なった、上司と合わない、想像していた仕事と違う、そんなギャップに苦しむ方も多いかと思います。私も新卒入社時代は苦しみました。そんな過去の私と同様の境遇にいて悩んでいる方(特に若手社会人)にとって何か参考になれば幸いです。

と都合の良いことを言ってますが、たまたま記事を見つけた方は暇つぶし程度に楽しんでいただけたらと思います。

今後、技術者の転職やキャリアについても投稿する予定ですが、1社目で経験したことは現在の私のキャリアに対する価値観を変えたきっかけとなっております。

ご覧の方にも何かきっかけになればと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 

(1)新卒就活時

 当時、就活を進める上で「この業界・企業で働きたい」や「専攻を活かして◯◯したい」という明確な軸は正直持っていませんでした。ただ、なんとなく化学や材料の立場でモノづくりをしたいという、ざっくりした考えは持っていました。そのイメージは研究開発や応用開発といったところでしょう。そして、結果として国内・世界でダントツのトップシェア製品を有するメーカーに技術系として内定をいただきました。それまでは就活がうまくいっておらず苦しんでいた中で、その会社の選考だけは順調に進んだ感じで、吉報が届いた時はとにかくホッとしました。

勤務地となる技術拠点が田舎の僻地なのは気がかりでしたが、『材料〜最終製品まで一貫したモノづくりをしており、化学の立場で仕事ができる』『No.1シェアを誇るに値する技術力もあるだろう』『安定性も抜群』、、、

そんな期待を膨らませながら内定を承諾しました。

 

(2)当時の考え

 就活時も含めて配属が決まるまでは、第一希望とまではいかなくても院卒理系であれば専攻や希望にある程度は沿った形で部署や仕事が用意されるものだと信じ込んでいました。機械系なら製造装置の機械設計や開発、化学なら反応式を考察するなり材料特性を解析評価etc...ましてやエントリーシートや面接なんかでも希望についてはお話していますし、その上で内定を出したはず、そう考えていました。研究室や大学のOB・OGのお話を聞いても、ドンピシャではなくても専攻や研究内容の経験を活かして活躍されてる方も多かったので自身もそのようになるものだと想像していました。

 また、会社の安定性も自然と意識していました。将来にわたって衣食住に不自由なく過ごすためには安定した会社で働き続けることが無難だと思っていました。いわゆる昔ながらの終身雇用を前提とした価値観、子どもの頃から親や学校教育によって植え付けられた固定観念みたいなものがあったのだと思います。その当時は…

 

 

(3)運命の配属ガチャ

 大きな期待を胸に入社。最初3ヶ月の新人向け現場研修等を経て本配属となりますが、配属発表前に人事と改めて希望配属について面談があります。その3ヶ月間でいろいろと噂が耳に入るのですが、毎年50名以上いる技術採用のうち大半が幹部候補という名目で製造現場配属になるという話が流れました。少し不安な気持ちにもなりましたが、自分は選考で意思をお伝えしてますし、同期の中で「現場配属希望」「この会社で働けるなら配属はどこでもOK」という人も多く、そういう人たちが現場配属になるのだろうと想像していました。

そして人事との面談、私は選考時と変わらず希望をお伝えしました。そこで人事からひとこと「もちろん会社の事情も考えながら配属は決定されますので、全員が必ずしも希望通りにはならないことは認識しておいてください」

これを言われた人と言われなかった人がいたことは後に知りました。。。

 

そして配属発表、私のところには製造部(表面処理工程)の職場名が記されていました。

気持ち的にかなり落ち込みました。しかし、やってみないとわからない、やっていく中で新たな自分の強みを見出せるかもしれない、将来この経験が活きるかもしれない、そうポジティブに考えるようにしました。

 

そして本配属先での仕事がスタート。これが私のビジネスマンとしての暗黒時代になるとは、この時はまだ想像つきませんでした。

 

 

2章へつづく

1社目での暗黒時代:後編 - メーカー技術者のブログ

 

 

自己紹介

 

はじめまして

今回、初投稿ですが、メーカー技術者としての考え、キャリア・転職などについて語っていきます。その中でご覧になられる方に少しでも参考になればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

私は社会人8年目のめっき・表面処理技術者です。

某大学院(化学・物質工学系)を修了後、2回の転職を経て、現在3社目です。製造現場や開発を経験しておりますが、一貫してめっき関連の仕事をしています。

 

 

ブログを始めた理由

理由は3つあります。

 

 1つ目は単純に自身について記録しておきたいからです。将来、見返した時に当時自分は何を考え、経験したのかをわかるようにしておきたいです。

 2つ目は自身の技術者としての転職経験を伝えることで、同じ悩みを抱えるor境遇にいる方のお役に立てればと考えたからです。

働き方改革」「ジョブ型雇用」「終身雇用の崩壊」などのワードが代表するように、世間では働くことに対する考え方が変化していますよね。今後のキャリアについて悩んだり、転職を意識されてる方も多いかと思います。ネット上やSNSなどでも働き方や転職に関する情報は多くみられ、私もそれらを参考にして転職し、あるいは日々の仕事に励んでおります。しかし、それらの情報は文系職や経営系、IT系を対象としたものが多数で、メーカー技術者向けの情報はさほど多くありません。よって、技術者にとってはあまり参考にならないケースもあるかと思います。

私は社会人8年目ですが、技術者として転職を2回経験しました。何を思い転職に踏み切ったのか、転職活動で実感したことや実態をお伝えし、転職をお考えの技術者(特に若い方)の参考になれば幸いです。

 3つ目はめっき・表面処理技術に携わる中で感じたことや疑問、参考情報などを書き綴り、意欲向上につなげたいと思います。皆さまから意見もいただきながら自身も勉強したいと思います。

 

 ブログ初心者のため拙い内容かもしれませんが、読みやすい記事を書くために勉強をしながら少しずつ改善していけたらと思います。何かお気づきの点やアドバイスがあれば気軽にコメントいただけたら幸いです。

不定期になるかと思いますが、気長にやりたいと思いますので、お手柔らかによろしくお願いします。