メーカー技術者のブログ

技術者転職、めっき技術について

【問題提起】製造現場で感じる難しさ

 

お疲れさまです。

 

 今回は現場でものを流す難しさがテーマです。取り決めされたルールの中でQCDを達成するために、そこで働く人の心情はいかなるものかについて書きました。

現場で起きた違反事例について、なぜそうなったのか、当事者はどういう心理状態だったのかを想像し、違反を起こさないためにはどうすべきかしっかり考えてみましょう。

 

目次

 

 

(1)事例

 以前いた会社でこんなことが起きました。

普段は担当者Aと責任者Bで回す工程にて、ある日、どうしても当日中に流さないといけない製品が多くありました。しかし、その日はあいにくAが不在だったこともあり、工程が追いついていない状況でした。そこで責任者Bは元担当者Cにヘルプでやってもらおうとしました。ところが、これまた厄介なハードルがありました。ルール上、担当者以外が行う場合は事前に教育が必須で、たとえ過去に経験がある者であっても再教育という形で受ける必要があったそうです。その上で顧客への提出書類に担当者印を押すことができ、最終的に客先に納入されます。

当時の状況では、再教育をしている余裕はなく、とても間に合いそうにありませんでした。

上記のルールについてBもCも認識していました。

 

そこでBは

①Cに工程を入るように指示

②担当者印についてはAの印鑑を使って押印。Bもそれに関して黙認。

 

こういった流れで何とかその場を凌いだわけです。

 

しかし後の調査でこれが不適切行為(コンプライアンス違反寸前)として発覚しました。

 

社内でも社長クラスにまで問題報告がされ、始末書レベルにまで発展しました。

 

 

(2)問題提起

 ここで私が言いたいことは、“ルールや作業手順をしっかり守って、ものづくりをしましょう”、なんてことではありません。

責任者BやCの行動が問題であり、処分するなり是正すればいい…

そんな簡単な話でもないと私は考えます。

こんな状況において、あなたならどうしますか?ルールを遵守して適切に対応する自信は本当にありますか?ということです。

今回のような現場で起きる不適切行為は、制限速度50km/hの車道でバイクを走らせてる中、背後から70km/hで猛獣に追われても速度を守れますか?という状況に近いでしょう(当事者はそのくらいに感じていたかも)。

不適切行為が発生しない、かつQCDも守るために自分ならどうするかを考える必要はあります。

 

 

(3)納期を守るためにルールが守れない

 私も現場経験がありますが、現場レベルでは想像を絶するくらいに“納期”に追われている状況かと想像します。

例えば、不良が出た時のネガティブな気持ち。これは不良をつくったこと自体よりも、それによるタイムロス(再加工、原因と対策への対応など)が主な理由とも言えます。不良による納期遅れを恐れるのです。なぜ、そこまで“納期”に対し緊張するのか、上司や関係者から急かされることによるプレッシャーもあるでしょうし、本来人間が持つ心理なのかもしれません。製品を大量に捌く製造現場においては、その一つひとつに設定された納期に向き合いながら仕事をするため、その精神的負担は膨大です。その中で存在するルールは、納期順守の過程におけるハードルみたいなもので、現場スタッフにとっては正直、煩わしいものに感じるわけです。本来はルール順守があっての納期ですが、いざ差し迫った状況では誤った判断や行為をしてしまうのでしょう。

 

(4)起こさないためには

 もし自分だったら…

そう考えると、このままでは正直、自分も違反せずに行動できるか自信はありません。

おそらく、仕組みや組織上において対策が必要でしょう。

今後、このようなことが起きないように、ものづくりに携わる人間として検討すべきことことしては

 

・違反できない仕組みづくり

*印を電子化し、本人しか使用できないようにする。

*工程自動化、AI化

*開発段階で工程省略、簡略化検討

・教育方法の見直し

*ルール順守の徹底というより、ルール違反したらこうなるor顧客や会社そして自身にこういうダメージがあるという想像力を養う

*不正は必ずばれるという教育

・人員、労務管理の見直し

・メンバー間および管理職とのコミュニケーション改善

 

などが挙げられるでしょう。

しかし、これだけでは不十分でしょうし、まだまだ根本的解決にはなっていないかもしれません。コミュニケーションなんてそう簡単に改善できるもんでもないし…(ただの理想)

 

ぜひ、ここであげた事例を参考にし、法令や規定に関して各社(皆様の職場)が抱える潜在的な問題、QCDにかかわる懸念について議論して、それぞれに適した未然防止、解決策を見出してもらえればと思います。

 

 

まとめ

・現場当事者は“納期”という計り知れないプレッシャーの中、仕事をしている。それが不適切行為につながる要因になり得る。

・自分ならどうするかを想像して考えることが重要

 

 

以上